IT経営実践事例集

経営戦略・経営改革・業務改革を実践し、
IT経営を実現した事例を紹介します。

「我が社のピカ一技術は何だ!」

得意技を企業ブランドまで高めた苦労人社長

■「中堅・中小企業優秀経営者顕彰を受賞!」
「30年前はだれも認めようとしなかったね」苦労人社長は淡々と当時を振り返って語る。当社は、3K職場の代表選手のように言われる金属表面処理加工業(めっき業)であるが、工場は先端技術の製品を扱っているかのように綺麗だ!社長は、「いつまでも職人芸に頼っていては生き残れない!」と、3Kイメージの業界でいち早く自動機械化に着手、全自動めっき装置を独自に開発し、現在では6ラインが稼動する近代的な工場を完成させ、みごと、平成16年度中堅・中小企業優秀経営者顕彰で地域社会貢献者賞に輝いた。

■得意技を企業ブランド化!
苦節30年、苦労人社長は「何の苦労もなかったよ。ただ仕事が好きで、工夫して工夫して、とことん研究しないと気がおさまらないからね」と、70歳を過ぎても若々しさと情熱を感じさせる。自動機械による安定的な生産ラインの構築により、安定した品質で確実な納期を実現、大手メーカーの購買担当者に「表面処理ならお宅に任せるのが一番!」とまで言わせる結果となり大きな信頼性を獲得することができた。ここに得意技の企業ブランド化が達成できたことになる。

■IT経営応援隊「経営者研修会」に参加
 e-Japan戦略を実現するための経済産業省の施策にITSSP事業(ITSSP:IT Solution Square Project は平成16年度で終了し、平成17年度から発展的に「IT経営応援隊事業」:ITを活用して経営改革を支援する事業に引き継がれている)があり、この中に中小企業の経営者または経営幹部のための「経営者研修会」がある。この「経営者研修会」は、企業の外部環境と内部環境を分析して経営課題を明確にし、経営課題を解決する重要成功要因(CSF:これを実行すればかならず成功できる施策)を抽出して経営戦略を立案するとともに、具体的なアクションプラン(実施計画)を立て、さらに経営戦略を人間系で解決するための経営改革企画とIT系で解決するための情報化企画に落とし込み、中小企業のIT経営(ITを活用して経営改革を実現する)をグループ討議(グループ・コンセンサス方式)で学ぶという、極めて実践的、効果的な研修であり、すでに全国の多数の経営者や経営幹部が参加している。この研修のインストラクターはITコーディネータが担当している。  当社はこの経営者研修会に、実務を統括する品証部長を派遣、部長は真剣にこの研修に挑み、IT経営の重要性について理解を深めた。

■当社の経営戦略
今まで社内では経営戦略立案といった討議がなされたわけではないが、社長の頭の中では鮮明に戦略が練られ、具体的に実践されてきたものと思われる。だから冒頭に記述した「得意技を企業ブランドに」が実現できたわけである。
 当社の内部環境・外部環境分析(SWOT分析)に基づいて経営戦略をまとめてみると、
@「強みを活かしてチャンスを獲る戦略」
 自動機械化の強みを活かして大手メーカーの表面処理加工に特化し徹底的に専業化する
A「脅威をチャンスに変える戦略」
 地球環境対策をいち早く自動機械に盛り込み、他社と差別化する
B「弱みを改善して強みに変える戦略」
 人材育成に投資し、後継者となる経営幹部を早期に育成する
といったように、従来型の下請企業では想像もつかないほど明確な経営戦略が打ち出されることとなる。




■社内研修会の実施

注目されるのは、「弱みを改善して強みに変える戦略」である。当社の戦略@とAは先見性に優れた社長の実行力で既に実践されているが、自社の弱みを認識し、戦略Bをすぐに実行すべく計画している。当社の社内研修会は、「経営者研修会」を実施する竃シ古屋ソフトウェアセンターの「幹部社員のためのマネジメント研修」を利用、当社の組織の成熟度や個々の社員に合わせてカスタマイズされたカリキュラムとなっている。  社員研修会は、隔週土曜日の13:00−17:00に全部で5回行われ、希望する社員であればだれでも参加することができる。社長は、若い社員が育って後継者となり、組織的経営の実現でさらに会社が発展するものと期待している。  

■「我が社のピカ一技術は何だ?」
「泉はどんなに小さくとも大空の姿を写すことができる」と格言にあるように、町工場の代名詞、金属加工業や機械部品加工業などのいわゆる下請企業で、どんなに小さな企業であってもピカ一の技術があるからこそ、今現在仕事が来ているわけで、そのことに当事者はほとんど意識していないことが多い。この企業の事例に学び、「我が社のピカ一技術は何だ?」と社員全員で一度「宝探し」をして欲しい。
 「このやり方は職人芸だから○○さんでないとできないなあ」とか「不良率が高いが、微妙な調整がいるから仕方ないな」といった会話があったらチャンス!職人芸や特定の人に依存する作業は、その作業をどこの会社へ持っていっても簡単にはできないことが多く、そこに独自技術があると思われる。そんな独自なものを自動化したり、ノウハウとして文書化し自社の知識として共有化、ITを活用して社員のだれもが使えるようにすることで独自の強みとすることができる。  下請企業の究極の戦略「得意技を企業ブランド化」のために、「我が社のピカ一技術は何だ?」「どんな小さな工場でも独自の何かがあるはずだ!」経営者や管理者は、今すぐ職場のみんなを集めてミーティングを始めよう!
 また、IT経営応援隊「経営者研修会」は本年度も全国各地で開催が計画されている。詳しくは、IT経営応援隊のページ http://www.itouentai.jp/ で確認されたい。無料で参加できるので、多くの経営者・経営幹部がIT経営を学び、会社の発展のために活用されたい。



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